アンデス文明は「回転」という概念がなかったためにそのつくりはアシンメトリーで個性的。また、文字もなくこのような土器にその当時の記憶を残しました。今回はそのアンデス文明の個性的な土器の一部をご紹介します。

Entry No.1

未焼成の小型男性人像
Unfired Clay Human Male Figurine

カラル文化(紀元前3000年頃から前2000年頃)カラル遺跡博物館所蔵

てづくねで作られた未焼成の土偶。ヘアバンドを着けた髪型の男性である。座った姿勢で手は胸の前で曲げられていた。先端部が欠けているが、埋納の儀礼の一環として壊されたのかもしれない 。カラル遺跡から数キロのところにあるミラヤ遺跡出土。このような未焼成の土偶は、ミラヤ遺跡と同時代の先土器時代後期の海岸地帯の広い範囲の祭祀センターで見つかっている。

Entry No.2

自身の首を切る人物の象形鐙型土器
Stirrup-Spout Bottle of a Figure Cutting His Own Throat

クピスニケ文化(紀元前1200年頃から前800年頃)ペルー文化省・国立チャビン博物館所蔵

耳飾りや全身の刺青から見るに宗教的指導者であろう。形成期の首級は、生贄にされた戦争捕虜のものと解釈するよりも、(史実がどうかはともかく)高位の人物が自ら身を捧げるほどの、重要な儀礼的要素であったと考 えるべきである。

Entry No.3

同じ人物の人生の3つの時期の顔を表現した肖像土器
Three Portrait Vessels of the Same Man at Three Different Stages of Life

モチェ文化(紀元200年頃から750/800年頃)ラルコ博物館所蔵

3点あるうちの一つ。モチェのあるエリート男性の人生の3つの時期の顔を写し取ったもの。ただモチェの美的表現においては、耳飾りは高い社会的地位を一目でわかるように示すしるしなのだが彼には耳たぶに穴がない。もしかすると、彼はエリートの一族に生まれたのではなく、比較的若い時期に自らの力で(戦闘での手柄で?)ひとかどの人物になり、それを称えてこの一連の肖像土器が作られたのかもしれない。

Entry No.4

裸の捕虜をかたどった鐙型注口土器
Stirrup-Spout Bottle Representing a Naked Captive

モチェ文化(紀元200年頃から750/800年頃)ラルコ博物館所蔵

戦闘で捕虜となった戦士が裸にされ後ろ手に縛られている姿を表現しているように見える。首には、彼を引っ立てるためのロープが巻かれている。おそらく、彼は生贄として喉をかき切られる運命の時を待っているのだろう。耳飾りはこの戦士が高い地位にあったことを示している。

Entry No.5

裸の男性の背中にネコ科動物がおぶさった鐙型注口土器
Stirrup-Spout Bottle Depicting a Naked Man with a Feline on His Back

モチェ文化(紀元200年頃から750/800年頃)ラルコ博物館所蔵

裸の男性があぐらをかいて座り、祈っているように胸の前で手を合わせ、背中には大型のネコ科動物が前足を男の肩に乗せ後足は腰にあずけておぶさって、肩ごしに口を半分開けた顔をのぞかせている。

Entry No.6

シカを背負う死者をかたどった鐙型注口土器
Stirrup-Spout Bottle Illustrating a Corpse Carrying a Deer on His Back

モチェ文化(紀元200年頃から750/800年頃)ラルコ博物館所蔵

死者がおそらく狩りで仕留めたシカを背負って運んでいるところが描写されている。モチェの世界観は「死は生命の終わりではなく単なる一段階にすぎず、死者の生命は生者と交流しつづける」というもので、死者は生前と同様に服を着て生前と同様の行動をしている姿で描かれている。

Entry No.7

船上の海の神をかたどった土器
Vessel Showing the Deity of the Ocean on His Boat

モチェ文化(紀元200年頃から750/800年頃)ラルコ博物館所蔵

海の神(冥界の神)が生贄の人間を連れて漁船に乗っている場面を描写している。神は、海の神であることを示す特徴的な頭飾り(2本の帯が上方に伸び、それらの先端がヘビかネコ科動物の頭になっている)をかぶっている。

Entry No.8

トウモロコシの穂軸の姿をした神を描いた土器
Jar Depicting a Deity as a Maize Cob

モチェ文化(紀元200年頃から750/800年頃)ラルコ博物館所蔵

モチェの職人は、ジャガイモ、マメ、落花生、カボチャ、トウモロコシなど多くの食用植物を土器で描写した。この型入れ土器は、牙のある神がトウモロコシの穂軸の形をした姿、あるいは穂軸の中に身を埋めている姿をかたどっている。

Entry No.9

座った男性をかたどった2色あぶみ型注口土器
Bichrome Salinar Stirrup-Spout Bottle Portraying a Seated Man

サリナール文化(紀元前300年頃から前100年頃?)ラルコ博物館所蔵

土器の像の耳飾りと頭飾りから、比較的高い地位にある人物がモデルと考えられる。真ん中から2色に塗り分けてあるのは、何らかの二元的概念――文化人類学で言う「半族」のような社会構造かもしれない――を象徴している可能性がある。

Entry No.10

金合金製の小型人物像
Gold Alloy Male and Female Figurines

インカ文化(紀元15世紀早期から1572年頃)ペルー文化省・国立考古学人類学歴史学博物館所蔵

土器ではないが、可愛いので今回ラインナップ。男女の小型人物像で、インカの首都クスコの中心広場などで行われた「カパコチャ」というインカの人々が最も神聖な儀礼で使うことを主目的として作られた。

Entry No.11

幾何学紋様と2つの顔がある背の高い土器
Tall Ceramic Vase with Geometric Designs and Two Human Faces

ナスカ文化(紀元前200年頃から紀元650年頃)ディダクティコ アントニー二博物館

4つ目の紋様帯には、鼻が盛り上がった人面があり、赤色でフェイスペインティングがされ、口ひげと顎ひげが表され、赤色、白色の耳飾りをつけている。また頭には波状紋のバンドを巻いている。

Entry No.12

装飾付きの壺
Decorated Ceramic Bottle

シカン文化(紀元800年頃から1375年頃)ペルー文化省・国立シカン博物館

この土器にはシカン神の顔があり、その両脇には非常に高い価値があった熱帯産のウミギクガイの1種スポンディルス・プリンケプスが左右対称に象られている。